Q 受託者は、信託財産の管理にあたり、どのような義務を負いますか?

A 受託者は、委託者及び受益者の信任を受けて財産を管理又は処分することになります。
したがって、受託者は、原則として善良なる管理者の注意義務を負います。
また、受益者のために忠実に信託事務を遂行する義務や、信託の本来の目的に従って信託事務を遂行する義務、受託者の固有財産と信託財産を分別して管理する義務、帳簿作成の義務、委託者や受益者に信託事務の処理の状況について報告する義務等を負います(信託法第29条~第39条)。

Q 受託者は、信託財産に属する財産を自由に管理又は処分等の行為をすることはできますか?受託者の権限に制限を持たせることはできますか?

A 受託者は、信託の目的の達成のために、自らの裁量によって信託事務を行うことがでます。
信託財産に属する財産に関する補修、売却、取壊し、交換、共有物分割、担保設定、訴訟提起等も、全て受託者の権限に属するものです。
ただし、信託契約の定めにより、受託者の権限に制限を加えることは可能です(信託法第26条)。

Q 受託者の任務は、どのような場合に終了しますか?

A 受託者の任務の終了事由には、下記のようなものがあります(信託法第56条)。
①受託者である個人が死亡したこと。
②受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと。
③受託者が破産手続開始の決定を受けたこと。
④受託者である法人が、合併以外の理由により解散したこと。
⑤受託者が辞任したこと。
⑥受託者が解任されたこと。
⑦信託行為において定めた事由が生じたこと。

Q 信託財産に属する動産や不動産を売却すると、売却代金は誰のものになりますか?

A 信託財産に属する動産や不動産を売却すると、その売却代金は、信託財産に属する金銭となります。
このほか、信託財産に属する不動産から賃料収益が上がった場合や、株式の配当金が生じた場合、信託財産に属する財産が損傷又は滅失して保険金請求権が発生した場合なども、全て信託財産に属する財産となります(信託法第16条)。

Q 受託者が、信託とは無関係に債務を負担している場合に、受託者の債権者が信託財産に属する財産について差押えをすることができますか?

A 信託とは無関係に、受託者が債務を負担している場合には、受託者の固有財産のみが差押えができる財産となり、受託者の債権者は、信託財産に属する財産について差押えをすることができません。

Q 受益者は、どのような権利を有しますか?

A 受益者は、受益権を有します。受益権は、具体的に次のような権利を有します。
ことができる。
①信託財産に属する財産の引渡しや給付を求める権利、信託財産から発生する権利(例えば信託不動産を賃貸することにより発生する「賃料債権」)など経済的な利益を求める権利。
②受託者等に対し、一定の行為を求めることができる権利(例えば、受託者に対して報告を求めたり、受託者の解任に関する意思決定をしたり、信託の終了に関する意思決定をしたりする権利)

Q 委託者には、どのような権限がありますか?

A 委託者は、信託の成立に関与した当事者であることから、信託成立後も、各種の権限を有します。
その一部を抜粋すると、信託事務の処理に関する報告請求権、受託者の選任、解任又は辞任に関する同意権、信託の変更に関する同意権、信託終了に関する同意権などです。