当相談所の解決事例

1.賃貸アパートのオーナー様の認知症対策のための家族信託

【相談内容】
 東京都杉並区にお住いの男性(51歳)の方からご相談。
 2棟の賃貸アパートの経営・管理をしている父親(81歳)は、1年前ぐらいから物忘れがひどくなり、体力や気力にも変化がみられ日常生活や賃貸アパートの経営・管理に支障をきたすようになってしまいました。
 しかし、母親(79歳)は、賃貸アパートの経営・管理については父親に任せきりで何もわかりません。
 もし、父親の認知症になってしまい、賃貸アパートの経営・管理ができなくなってしまったらどうしたらよいのか心配です。

【解決方法】
 父親名義の賃貸アパートの管理をする権限を、長男(相談者)に与える旨の家族信託契約を締結しました。
 家族信託契約の内容に従って、長男は、賃貸アパートの賃貸借契約、修繕契約などの各種の契約をすることができます。
 父親は今までどおり家賃収入を受け取ることができます。
 また、賃貸アパートを管理する長男には毎月一定の報酬を与えることができます。 

2.高齢者名義の自宅売却に備えるための家族信託

【相談内容】
 東京都江東区にお住いの男性(71歳)の方からの相談。 将来的に自分が老人ホームなどの施設に入居する際に自宅の土地・建物を売却して施設への入居資金や生活費に充てたいと考えています
 しかし、自分が認知症になってしまったら、自分名義の自宅の土地・建物を売却できなくなってしまうと聞きました。
 何か対策する方法はあるのでしょうか?

【解決方法】
 相談者本人の名義の自宅である土地・建物を売却する権限を、相談者の娘(42歳)に与える旨の家族信託契約を締結しました
 もし、将来、本人が認知症になってしまって判断能力が無くなってしまっても、娘の権限で自宅の売却をすることができます。

3.老朽化した賃貸アパート建て替えのための家族信託

【相談内容】
 埼玉県春日部市にお住いの女性(53歳)の方からの相談。 母親(82歳)名義の賃貸アパートが築47年が経ち老朽化が進んでいる。
 顧問税理士から賃貸アパートは立地条件もいいので、建て替えすることにより相続税の節税対策になるとアドバイスがありました。
 しかし、母親は高齢なので認知症になって判断能力が無くなり、賃貸アパートを建て替えるための建築業者との契約をできなくなるのではないかと心配しています。

【解決方法】
 母親名義の賃貸アパートを建て替えるための契約をする権限を、相談者である娘に与える旨の家族信託契約を締結しました。
 母親が認知症になって判断能力が無くなってしまっても、娘が代わって建築業者等との契約の当事者となることができます。

4.障がいを持っている子のための親が亡くなった後に備える家族信託

【相談内容】
 神奈川県相模原市にお住いの女性(68歳)の方からの相談。
 知的障がいを持っている長男(41歳)が自立生活が不可能な状態です。
 夫が2年前に亡くなっており、自分が亡くなった後の長男の生活が心配です。
 自分には、自宅(5000万円)と預金(6000万円)の財産があります。
 自分が亡くなった後は、この財産を使って、長女に長男の面倒をみてもらいたいと願っています。
 しかし、急に長女が自分の財産を継承しても長男のためにしっかり財産を管理できるのか不安があります。
 また、長男が亡くなった後は面倒を見てくれた長女に財産を継承したいと考えています。

【解決方法】
 母が亡くなった後、知的障がいを持っている長男の生活を引き続きサポートできるように、長女に母親の財産管理を任せる旨の家族信託契約書を締結します。
 そして、長男が亡くなったら面倒をみてくれた長女に財産を承継させるため旨を家族信託契約に記載します。
 また、長女が、知的障がいを持っている長男のために信託財産を使っているかをチェックするために、司法書士や弁護士などの専門家に信託監督人に就任してもらうこともできます。

5.先祖代々の土地・建物につき引き継がせる順番を指定するための家族信託

【相談事例】
 東京都狛江市の男性(56歳)の方からの相談。
 先祖代々続く地元の名士で当主である父(80歳)は、長男である自分と同居中です。父の意向としては、先祖代々続く土地や建物を守り抜くために、先ずは長男である自分、次に父の世話をしている自分の嫁(54歳)の順に引き継がせ、自分には子供がいないため、最終的には一家の土地や建物は、次男(53歳)の子供(26歳)へ引き継がせたいと考えています。

【解決方法】
 父の土地建物を遺言により長男に承継した場合には、遺言は一代限りしか有効にならないので、将来、長男が死亡したときに長男の嫁が当該土地・建物を承継し、その後、長男の嫁が死亡したときは、長男の嫁の親族(兄弟姉妹又は父母)に当該土地建物が相続されてしまう可能性があります。
 そのため、家族信託を利用して、長男→長男の嫁→次男の子(孫)の順に財産を承継できる旨を定めた家族信託契約を締結します。